[ウィッチブレードのひとりごと]
私は料理を注文しおわると、お店の中を見渡した。 料理ギルドの本店にしてはやや狭いと思える店内は、客席の半分くらいが埋まっている。 レランの本店で落ち着いて食事をしたいなら、お昼時は避けたほうがいい。 お昼時には店の外にまで人があふれ、橋の欄干に腰掛けて食べる人もいるくらいだ。
お待たせしましたー。 しばらくすると、料理が運ばれてきた。
私はなんとなく周りを見ながら、野菜サラダに手をつけた。 カウンターの向こうには、客席の数に比べて不釣合いに広い厨房が見える。 たぶんレランの本店では厨房が大事で、客席は付け足しみたいなものなのだろう。 広い厨房を見ていていると、そんなレランの考えが感じられるような気がする。
厨房の中では、レランの人たちが忙しそうに仕事をしている。 きびきびと働くその様子は、見ていてとても気持ちがいい。 私は魚介マリネを口に運びながらも、レランの人たちの働きぶりに見とれていた。
レランの本店で働いている人たちは、たぶんギルドの中でも優秀な人たちなんだろう。 本店で働きたくても働けないギルド員もいるのかもしれないな。 私はそんなことを考えながら、切り身魚のチーズ焼きにとりかかることにした。
ダイアロスにはシェル・レランのような職業ギルドがいくつかある。 ギルドはそれぞれの職業に必要な技術の研究開発や、新人の教育育成を行っている。 そして、そのほとんどは良くも悪くも自分の仕事が第一だと考えている人たちばかりだ。 中には、自分の仕事以外にはあまり興味がないように見える人もいる。 でも- 私は白身魚とホタテのワイン蒸しを口に運ぶ手を止めた。 アルケィナだけは違うような気がする。
もちろんこれは私の偏見かもしれない。 私は魔法のことを良く知らないから、そう思うだけなのかもしれない。 でも、アルケィナは他のギルドとはちょっと違うような気がする。 他のギルドが自分たちの仕事にだけ打ち込んでいるのに対して、 アルケィナは自分の仕事以外のことにも興味を持っているように見える。 例えば、ノアストーンの力とかモラ族の秘術とか。
ふう。 私は一息つくと、食事を再開した。