[ウィッチブレードのひとりごと]
あの女の人のおかしな行動は、アルケィナとも関係があるのだろうか? 私は岩茸とサーモンのホイル焼きを食べながら考えた。 私たちはイーゴが悪者だと教えられてきた。 ノア・ストーンの力やモラ族の秘術をイーゴが悪用しようとしていると。 でも、ノア・ストーンや秘術を手に入れようとしているのは、イーゴだけじゃない。 アルケィナだってイーゴと同じくらい、ノア・ストーンや秘術に興味を持っているんじゃないだろうか?
そもそも魔法使いの人には変な人が多い。 いや、変な人しかいないと言ってもいいくらいだ。 会長だって、いい人ではあるけど変な人には違いない。 島中の人たちから聞き取り調査をして、それを全部メモしているなんて 普通の人には出来ないし、やろうとも思わないだろう。 言ってみればアルケィナはそんな変な人たちの集まりだ。 変な人たちがノア・ストーンや秘術を手に入れるのは、イーゴが手に入れるのと同じくらい危険なんじゃないだろうか? 私はアンコウの唐揚げをつまむと、口の中に放り込んだ。
そういえば- エル研の活動についてアルケィナはどう思っているんだろう? エルアン宮殿を発掘するとき、アルケィナの働きが大きかったと聞いた事がある。 当然他のエルアン遺跡についてもアルケィナは興味を持っているはずだ。 でも、研究会の調査にアルケィナが口を出してきたことは今までなかったはず。 その日の思いつきで遺跡を調査したことも何度もあったから、あらかじめ許可を取っていたとも思えない。 エル研の存在はまだアルケィナの耳に入っていないのか? アルケィナはエル研をとるに足らない存在だと思っているのか? それとも・・・。
私はある可能性に気づき、口の中にあった魚介類のゼリー寄せを思わずごくりと飲み込んだ。 会長がエルアン文明研究会を立ち上げた背後には、はじめからアルケィナの意向があったんじゃないだろうか? そもそもエルアン文明を研究しようという団体に対して、アルケィナが知らぬふりをしているほうがおかしいじゃないか。 アルケィナがエル研に表向き何も言ってこないのは、裏でちゃんと報告がされているからだとすれば説明がつく。 ではどうしてアルケィナが直接調査をせず、エル研を使って調査させているのだろう? それはもちろん、アルケィナがノア・ストーンやモラの秘術に関心があることを、できるだけ隠したいから。 つまり、エル研を使って調査をさせていること自体、アルケィナがノア・ストーンやモラの秘術に野心を抱いていることの証拠になる。 アルケィナは職業ギルドの範疇を超えてダイアロス全体に大きな影響力を持とうとしているのではないだろうか? アルケィナによるダイアロス統一。 エルアン文明研究会はそのためにアルケィナに利用されているのでは?
そこまで考えると、私はなぜか胸が苦しくなるのを感じた。 胸かおなかかちょっと良くわからないが、とにかくそのあたりだ。