[ガブたまねぎの目に沁みたい話]
わたしの肉体が島に来る前と後で同じなのか、違うのか。わたしは考えながら街を歩いていた。
調査を始めてまず初めに疑問に思ったのは、なぜ旅人には4種族しかいないのか、ということだ。 つまり旅人の種族はニューター・コグニート・エルモニー・パンデモスの4種族のみに限定されていて、それ以外の種族の旅人は、どこを探してもいない。 島には他の種族がたくさんいるのに、だ。もちろん大陸にもである。 (これより先は、上記4種族を便宜上「ホム種族」と呼称することにします)
この事実が意味するところは、次の3つのうちのいずれかか、もしくはそれらの組み合わせのはずだ。 ・旅人は、何らかの理由によって、ホム種族の中からのみ選ばれている(同じ肉体説1)。 ・モラの秘術で蘇生できるのはホム種族のみで、ホム種族以外の旅人は蘇生されずにすべて沈んでいる(同じ肉体説2)。 ・魂の移し先として用意されているのが、ホム種族の肉体しかない(違う肉体説)。
今のところ、ホム種族が旅人として選ばれている理由なんて聞いたことがない。イルミナ様からの神託もそんなことには触れていなかった。 ホム以外の種族が蘇生できないというのも疑問がある。蘇生できない種族を、わざわざイルミナ様が呼び寄せたりするだろうか?大体魂の質に種族間の差なんてあるのだろうか。 それに対して違う肉体説に立った側の仮説は、目に触れるホムンクルスがすべて「ホム種族」のみからなっている、ということからも説得力があるように思う。
(わたしは本当は何だったのだろう……)
否定したい考えに思考が支配されてしまっていた。足取りまで暗い気持ちに浸りながら歩いていたら、気が付くとわたしはネオク山の中にいた。
「美容ギルドか……。そういえば、美容の技術を使えば魂を移すことも出来るんだっけ。」 何か面白い話が聞けるかもしれない。私は建物の中に入って、マスターらしき人物に話を聞くことにした。
「あの、魂を違う肉体に移す技術について教えてほしいのですが。」 『ああ、種族変更のことなら……実は、私たちにもよく分かっていないのです。』 「え?」 『古文書には、魂の器と転生石があれば可能だと書かれています。もし魂の器を作ることができれば……できるのかもしれませんね。』
作ることができれば、だって? ホムンクルスって現代の技術じゃないのか!?
私の願望が、息を吹き返したのを感じた。
つづく