[セレナイアの手記]
ネオクの暮らしにも慣れてきた。 冷え込む明け方には温かいミルクココアを飲んで お昼になったら細竹のコリコリした食感がうれしい エルガディン風山菜パスタを食べに行く。
ガードのお姉さんも言っていたけれど ビスクと違って水は貴重品。 雨が降ってもすぐに地面に吸い込まれてしまうし 身体を洗うのも、お湯で湿らせた布で拭くのが精いっぱい。
幸い空気が乾燥しているから 2,3日くらい洗わなくてもべとべとしないけど。
少し、慣れないのは街の人たちとのコミュニケーション。 どのエルガディンの人からも感じる2つの強烈な思いがある。
1つは、生産を中心に国力を高めていこうという意気込み。 もう1つは、国を奪ったビスクへの恨み。
「大陸人か?」「ビスクの味方か?」 とストレートに聞かれたことも少なくない。
とても言えないけど、ビスクが気に入っていた私にとっては心が痛い。 国力を高めるポジティブな思いにしても、そのゴールは復讐だ。
それからもう一つ、よく聞くのが5人の英雄の話で 今から500年前に竜と心を通わせた5人の騎士が 群雄割拠の時代をまとめあげてエルガディン王国を興した。 竜の繁殖方法を確立して、騎竜として大切に育てている。
この話は大抵、彼らをはじめとしてエルガディンは この島の平和を願っていただけなのに...と締めくくられる。
でも、ネオク・ラングでエルガディンが 今のモラ族を迫害していたという話を聞いたし 獣人の国、サスールとも戦争があったって聞いた。
これって、矛盾じゃない? どちらも防衛戦争ならともかく、サスールはどうか知らないけど 力のないモラ族が戦争を仕掛けてくるとはとても思えないし。
それに、今すぐビスクを攻撃すべしっていう考えの過激派がいて 慎重派と内乱状態になっているっていうことも王様自ら話してくれた。
…どう考えても、結構攻撃的な性格してるよねこの国の人。
さらに不可解なこともあるのだけど、それは次に書きましょう。 そろそろ夕方、明け方と同じように冷え込んでくるから ペンを持つ手がかじかんできちゃった。