[セレナイアの手記]
今日もネオク地方の竜について調べている。 ネオク・ラングから半日ほど歩いた場所に 竜の墓場と呼ばれる場所がある。
見上げるほど巨大な竜の骨が風にさらされている。 ネオクの赤茶けた大地と違って地面まで白いのは 砕けた骨に覆われているからだろうか。
墓場という地名からイメージされるような寂しい場所ではなく 生きたオルヴァン種やネオクドラゴン種が闊歩しているし 小人族の集落や、3体の巨人までいる。
いろいろ気になるところはあるけれど まずはやっぱり、墓場の主である骨たちを調べてみよう。
白くてひび割れたそれは、化石ではなさそう。 土から露出して完全な形を残しているし 地面の近くの部分からは繊維のような組織まで見て取れる。
そしてなにより、大きい! 鼻先から、たぶん尻尾の付け根くらいまででも100m以上ある。 もしネオク・ドラゴン種と同じような姿をしていれば 尻尾の先まで150m~200mくらいはあったんじゃないかな。
そういえば、ネオクドラゴン種はみな「ベビー」と呼ばれている。 生息地も竜の墓場の奥ということは この骨の主たちは成長したネオクドラゴン種なんだろうか。 それならどうして、今は成竜がいないんだろう? これだけ大きな骨にしても、どうしてここにしかないんだろう?
エルガディンの人に話を聞いてみたかったけれど この場所には竜の谷の入口を守る人と パートナーだった騎竜を失って嘆き悲しむ人の 2人の軍人しかいない。
巨大な竜の話は聞けなかったし、2人目の話は心が痛くなる。 まだお昼前だけど、もう今日の調査はここまでにして この場所から離れましょう。
暗い話を聞いて、自然と視線が足元に落ちる。 この乾いた白い砂がすべて竜の骨の粉だとすると やっぱり落ち着かない気分になる。
あの人の愛竜も、ここにこうして眠って… あれ?スカイドラゴン種の骨なんかあるのかな? 見渡す限り、巨大な骨ばかりで スカイドラゴン種やオルヴァン種の骨は見当たらない。
まぁ、さすがに騎竜はきちんと埋葬されそうだし オルヴァン種の骨も小人族が持って行ってしまうのかも。
そろそろ竜にまつわる謎が増えてきたしちょっと整理しましょう。 ・エルガディン人がスカイドラゴン種とだけ仲良くなれた理由 ・ネオクドラゴン種の成竜がいないのはなぜか ・竜の墓場の骨はネオクドラゴン種のものだけなのか
それにしても、墓場の目と鼻の先によく街なんて作ったよね。 竜が神様だから、聖人のお墓を聖地にするような感覚なのかもしれないけど…