[ウィッチブレードのひとりごと]
道を進むと、アマゾネスの見張りの数が減ってきた。 一番危ないところは過ぎたみたいだ。 私は少しほっとしながらあたりを見渡した。 道の先には急な坂道が見える。 あの坂を上りきれば崖の上に出る。 あと少し。 私は坂の下でひと息つくと、坂を一気に駆け上がった。 坂の上には、崩れた岩積みの壁が迷路のように入り組んで建っている。 私はそのエルアン人の遺跡の中を空中階段に向かって歩いていった。
すると突然、あたりに何か生き物の気配を感じた。 壁が邪魔になって姿は見えないけど、確かに何かいる。 私は敵の気配を感じるために神経を集中させた。 優れたレンジャーは敵の気配を感じとることが出来る。 気配だけでなく、どんな生き物がまわりにいるのかもわかるのだ。 山犬だ。間違いない。 それもかなり大きい。 たぶん大人のコグニートくらいの大きさだろう。
私は矢を少ししか持ってきていないことを思い出し舌打ちをした。 山犬は群で行動する。 近くには仲間がいるはずだった。 一撃で倒さなければ、仲間を呼ばれてしまうだろう。 できれば戦いたくないな。 ちょっと考えたが、私は弓を振り回しながら、しっしっと大きな声を出した。 様子をうかがっていると、向こうもこちらに気がついたようだ。 しばらく待っていると、山犬の気配が少しずつ小さくなっていく。 よかった。どうやら逃げてくれたようだ。 私は壁から顔を出し、何もいないことを確かめると、階段に向かうことにした。
私は階段につくとバッグを下ろし、中から紙袋を取り出した。 紙袋の中にはタマゴサンドがどっさり。 もうおなかがペコペコだった私は、階段に腰かけるとタマゴサンドをほおばった。 暖かい日差しの中、かすかに風を感じながらサンドウィッチを食べていると、 とても幸せな気分になってくる。 少しでも長くこの気分を味わっていたかった。 ゆっくり食べよう。 タマゴサンドがもう1袋と野菜サンドが2袋あるんだから。