[カザヒシのメモ帳]
ラル・ファク教について知るほど、私のビスクに対するイメージが悪くなっている気がする。 親友の言った通り、もしかしてかなり攻撃的な宗教なのではないだろうか? もちろん街は今日も平和なのだが、この平和も一方的な侵略の上にあるものだと考えると、少し複雑だ。
今度は逆にラスレオ大聖堂からジオベイ闘技場へと走ってみる。 イルミナ様を支持する信心深いラル・ファク教徒側と、アクセル様を支持する戦士たちは、 ビスク内部でも派閥が割れているようなので、今度は逆側ということになるだろうか。
街の人の話を聞くと、 イルミナ様がノア・ストーンの制御を試みている間に図々しくもアクセル様が街を仕切り始めた、とか、 アクセル様が政治や治安維持に努めている間、 イルミナ様は女王でありながら街のことに無関心すぎる、だったり。.
闘技場の熱気を感じながら、いかにも屈強そうな闘技場の戦士たちに話を聞いてみた。 ビスク人なら誰もが口にする、というほどでもないが、ほとんどの人はやはり 『ラル・ファク、イル・ファッシーナ』と口にする。 しかし、闘技場の人たちは他と比べて、その言葉を言わなかったような気がする。 彼らはラル・ファクの神より、むしろアクセル様とその強さを信じているという印象だ。
ドラキア帝国の階級制度に対しての不満、平民としてのアクセル様への期待、 武器屋の人は、イルミナ様もミスト様も役立たずとまで言っていた。
実際のところ、現在この街を治めているのはアクセル様で間違いない。 ミスト様はあくまで神官といったところで、人々の心の支えにはなっているかもしれないが、 政治や軍事に対して腕をふるっている様子はなく、女王のイルミナ様に至っては、 ビスクが上陸した八年前からノア・ストーンの制御につきっきりで、ほとんどの人は顔も見ていない。
いくらすごい人でも姿が見えないようでは、目の前の強い武人の方がよほど頼りになるというものだろう。 それはまるで神への信仰そのものであるかのように、私はやはりそう思う。 イルミナ様がどれだけ素晴らしい人なのかは知らないが、 ちゃんと街の政治や治安維持、軍備を怠らない人の方が、現実的に頼れるのは当然と言える。 勇気づけられると言われるアクセル様の言葉を、一度しっかり聞いてみよう。