[ウィッチブレードのひとりごと]
西銀まで戻って来てたんだから、まず銀行によってお金を預けておけばよかった。 家に帰って最初のうちは、自分の間抜けさにへこんでいたけど、しばらくたつとだんだん腹が立ってきた。
どうしてこの世には泥棒なんているんだろう? 他人の物を盗むなんていけないことだ。 お金が無いなら働けばいいんだ。 働こうと思えば仕事なんていくらでもあるんだから。
どうしても盗みたいなら、私なんかよりもっとお金持ちの人から盗めばいい。 私なんか狭いアパート暮らしなのに。 家を持ってる人は、私が見たことも無いような大金を持ってるに違いない。 貧乏な私から盗むより、そういう人から盗んだほうがよっぽど稼げるはずだ。
いや、まてよ? そもそも泥棒って儲かるんだろうか? キ・カ大陸ならともかく、ダイアロスには素晴らしい銀行システムがある。 預けたものをどこの銀行でも引き出せる、夢みたいな仕組みだ。 それに、家のセキュリティも万全みたいだし・・・。 私は家を持ってないから詳しいことはわからないけど、そういう話を聞いた事がある。 私みたいに大金や貴重品を持って街をぶらぶらしてる人なんて、そんなにいるとも思えないじゃないか。 泥棒の人たちは、ちゃんと暮らしていけてるんだろうか? 他人事ながら少し心配になってきてしまった。
そういえば- ビスクの街のどこかに盗賊ギルドがあるという噂を聞いたことがある。 でも、盗賊ギルドの詳しいことはほとんど知られていない。 盗賊ギルドのことが詳しく知られていないのは、おおっぴらに出来ない職業だからだ、と今まで私は思ってた。 でも、ひょっとしたら違うかもしれない。 盗賊ギルドは実体がほとんど無いギルドなんじゃないだろうか? 実体が無ければ詳しいことが知られていないのも当たり前だ。 だって、泥棒のなり手がそんなにいるとは思えない。 泥棒をするよりボスツアーに参加したほうがよっぽど稼げそうなんだから。
だとしたら、さっきの男の人はダイアロスにいる数少ない泥棒のうちの一人ということになる。 私はさっきの男の後姿を思い出していた。 稼げないのに泥棒を職業に選ぶ人ってどういう人なんだろうか?
つづく