[カザヒシのメモ帳]
「サスール は、獣人の国と言うがそれも昔の話だ。
今は色々な種族がいるし、人里に下りて来るのも 俺らのような種族が多いようだ。
そういった意味では、本当の サスール人 を 見たことがあるというヤツは、ほとんどいないだろう。」
ビスクやネオクに姿を見せる事のない獣人族だが、今のサスールは獣人ばかりというわけでもない。 むしろ以前訪れた印象としては、獣人の方が少ないか、精々半分程度だった気がする。
それにしても、オーガ達は宗教に関わる話はしなかった。 神様だのなんだのという言葉はついに出てこなかった。 そもそも、この村の人口自体が多いとは言えないし、ましてオーガに限れば十人もいないくらいだ。 オーガの中に熱心な宗教家がいたとしても、もうちょっと人のいるところで宣教するだろう。
多くの行商人が行き交い、貿易の中心点となっているからだろうか。 オーガ達は優しく穏やかで、旅人達や行商人を歓迎してくれる。 行商人も行商人で、各地を移動したりしているせいだろうか?
『ラル・ファク、イル・ファッシーナ』 『天かける神のご加護がありますように』 『血塗られた御手に栄えあれ』 『右手に、森の恵みを。 左手に、太陽の笑みを…』
いつもなら街のどこかで必ず耳にするお馴染みの言葉を発する人もいなかった。 代わりに、という訳でもないのだが、各地の変わった話を聞くことが出来た。 多くの行商人達が村を出入りしているため、他の街では聞けないようなことが聞けるのだ。
フォレスターに関わる雑貨を扱うのは、それらがフォレスターギルドの宣伝も兼ねているらしい。 サスールの技術を他の地域に売り込み、新しい商品を開発することを楽しんでいるという行商人。 ビスクからはるばる海の幸を届けに来る行商人もいるとか。
村へ新しく行商人が来たと思ったら、さっきまでいた行商人がどこかへ行ってしまっている。 往来の激しい場所だ。だからこそ、この穏やかな村はそもそも宗教とは無縁ということなのだろう。
少し名残惜しいが、次はサスールの方へ行ってみよう。
山麓の村から北東へ向かって、危険で険しい山道が続いている。 村のすぐ外は凶暴な狼やバイソンが辺りに縄張りを作っている。安全とは言い難い。 山への道はもっと危険になるけど、サスールまで走り抜けるくらいは出来るだろう。 何とか逃げ切ってみよう。