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エルアン文明研究会

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氷の世界

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

動物の鳴き声も、鳥の羽ばたく音も聞こえない。ただ風の音がするばかりで、生き物の気配はどこにもない。イプス湖の底にある傾いたアルターから私と鍛冶屋さんがやってきたのは、雪と氷に覆われた3000年後の世界だった。

ノア・ストーンの魔力と特別な思いを秘めたノア・ピースがあれば、このアルターで時代を超えることができる。湖底のアルターに居たモラ族のカルタモは、そう言いながら未来の記憶を私のノア・ピースに吹き込んでくれた。魔王となったイーゴが支配する世界、はるか未来のイプス渓谷。行くのは良いがカオスの闇をのぞき込んではいけない。カルタモはそう言っていた。

 

イプス湖の底に開いた亀裂のさらに奥深くにあったはずのアルターから降りると、そこはもう雪原の入り口だった。湖が無いどころか、湖底すらも無くなっている。湖の底の地面ごと無いのだ。3000年前は湖があって湖底の地面があったはずなのに、この時代では地面のはるか下が地平になっている。

ここには何もない。生命の無い世界は、それが存在している意味すら見あたらないほどに冷え切っている。こんな何もない場所で、たった一人になった魔王イーゴはいったい何をしたいのだろう。このうえない孤独と引き換えにしてでも、ここでやらなければならないことがあるのだろうか。

「ここには氷を掘りによく来るのよ」 そう言って歩いて行く鍛冶屋さんの後ろをついて行きながら、私は周りを見回す。 どこまでもどこまでも雪と氷だ。白以外の色が見当たらない。空の色まで真っ白で、そこには星も月も太陽も見えない。雪と氷に閉ざされたモノクロームの世界。ここには色というものすら存在していない。

なだらかな傾斜を登りきると、視界がひらけて遠くまで見通せるようになった。 正面には氷の階段。階段の上には黒いモヤのようなものが見える。右手には壊れた建造物のようなものが見えていた。

「あの黒いモヤがカオスゲートと呼ばれているカオスエイジへの入り口。黒いモヤの周りに浮かぶ破片のようなものが、かつてのノア・ストーンだよ。ノア・ストーンは、もう無い。あれがそのなれの果てらしい」 特に思い入れもないのか、鍛冶屋さんは淡々と説明する。

カオスエイジについては聞いたことがある。その名の通り、まだ大地も空も無い混沌の世界だ。現代から45億年前の神々の時代。その入り口があそこにある。

「右手に見える壊れた建物のようなものは?」 少し歩いてその折れた角のような建築物に近づくと、クレーターのようにすり鉢状になったくぼみの底に、なにかの模様が刻まれた大きな円盤が、地面になかば埋もれているのが見えた。

「ここの上空には浮遊都市があってね、お空にぷかぷか浮かんでいるの。その浮遊都市バハに行くための転送装置よ、あれは」 見上げてみたけど、ここからではその都市の姿を見ることはできなかった。見えないほどの高空にあるのか、雲にさえぎられているのかはわからない。

「イーゴが居るって言ってたけど、イーゴはどこに居るの?」 私がそう訊くと、鍛冶屋さんは少し考えてから言った。

「空の上だね。イーゴは浮遊都市バハに居る。それから、あのカオスゲートを抜けた先、45億年前の世界にも居る。そして、現代にも居る。現代では、あんたも知ってる通り、マブ教の教祖として存在してるよね。ここでは魔王として存在していて、45億年前の世界では神として存在している」

「イーゴは偏在している?ということ?」

「私たちが時間を移動してその時代に居るイーゴを見ているだけよ。偏在っていうのとは違うと思う。45億年前の世界にも現代にも3000年後の世界にも居るっていうだけ。私から見たら、あんたは今3000年後のここに居るけど、現代に戻れば現代にもあんたが居るでしょ?それと同じよ。見ている側が移動してるだけ。イーゴが何人も居るわけではないわ」 なるほど。 でも、あれ?なんかおかしい。ほんとにそうなの?

確かに私は今、鍛冶屋さんと一緒に3000年後のイプスに居る。このあと鍛冶屋さんと一緒に帰れば、現代にも私は居る。だけど、今この瞬間に、現代に私は居ないはずだ。私をここに残して鍛冶屋さんが現代に帰れば、そこで私に会うことはできない。

時間を移動できるのは、私たちだけなのだろうか。他の人は、その時代ごとのその人がそれぞれの時代に存在しているだけで、時を超えて旅することはできないのだろうか。

私から見ると、私を含めた旅人たちだけがこの世界にただ一人の存在で、それ以外の人は多くの時代に偏在しているように見える。時を超えるということは、頭で考えるととても複雑でわかりにくいことのようだ。実際にアルターに乗って旅してみると、とても単純なことに思えるのだけれど。

この未来のイプス渓谷には、1人のモラ族が居た。アルターを降りると目の前に立っていたステンという名の女性だ。彼女は言っていた、モラが最も恐れていた事態になってしまったと、闇が復活したのだと。魔王となったイーゴ、そしてイーゴが復活させた闇。 イーゴはなにがしたいのだろう。こんな淋しい場所で、いったい何をしているのだろう。