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エルアン文明研究会

毎週火曜日・土曜日 23:00~ Pearlサーバー レクスール城門南の小部屋 で開催中
誰でもお気軽にお越しください!

箱はいったい誰のもの?

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

のどかな日差しに照らされながら、牛がのんびり歩いている。 渓谷の西部にあるオーガ村から続く道が、南西から来て折れ曲がり、そのまま南へと続いている。

この道は、ときおりビスクからの行商人が通る道だ。 彼らは、ミーリム海岸を抜けて、オーガ村まで行商に来る。

北の方角には険しい山へと続く上り坂が見える。登って行くとサスールの国だ。 私はまだその姿を見たことがないけど、サスールからもオーガ村に行商に来る人が居るらしい。 オーガの村を中継点にして、2つの国の間で商品のやり取りが行われているというわけだ。

それは、キ・カ大陸からドラキアが攻めてくる前、ビスクの街にエルガディンが居た時代から、ずっと続いていることらしい。

サスールとエルガディンは戦争をしていたけど、芸術家のゼノさんが休戦させている。 そして、休戦状態の2つの国の中間にあるオーガ村が行商の街として栄えた。 この道がオーガ村からいったん北上してから南下しているのは、元々サスールとビスク(当時はエルガディンの街)をつなぐ道だったからなのだろう。

今、そののどかな小路のすぐそばには、大きな目玉の化け物が横たわっていた。

「一種の召喚じゃないかしら」 そう言ったのは“読み手”さんだ。

地面を掘ると突然あらわれたバエル。そして、バエルと共に地面からは宝箱が出てきていた。 彼女は今、その宝箱の鍵穴にピッキングツールを差し込んで、鍵を開けようとしている。

鍛冶屋さんと私に倒されてのびているあのバエルは、このエルビン渓谷には生息していない。 エルビン渓谷に居ないはずのバエルが、どうして突然あらわれたのかと私が訊いたのだ。

「この場所を掘ることがスイッチになってて、掘ると仕掛けてあった召喚魔法が発動するんじゃない? 私にもよくわからないけど」 お散歩に来たようなワンピース姿の読み手さんはそう続ける。

罠のように仕掛ける召喚魔法というのは聞いたことがない。 だけど、あのバエルは、確かに魔法で呼び出されたように突然あらわれた。 私が知らないだけで、もしかしたら何かをきっかけに発動する、罠のような召喚魔法もあるのかもしれない。でも、もしそうだとして、いったい誰がその魔法をここに仕掛けたんだろう。

「ここの地図は、モンスターが持っていたのよね」 と、私。

「地図を持ってたモンスターが、ここに箱を埋めたのかな」 そう訊いてみたけど、読み手さんは肩をすくめてわからないという仕草をしただけだった。

いったい、誰がここに宝箱を埋めたんだろう。 そして、どうしてここの地図を、モンスターが持っていたのだろう。

「モンスターの中には、宝箱を持ってるやつが居るよね。宝箱を持ってるのが居るってことは、それを埋めて、埋めた場所を地図にして持ってるモンスターも居るんじゃない?」 と言ったのは鍛冶屋さんだ。

「でも、そうすると、罠の召喚魔法を仕掛けたのは、そのモンスターだということになるよね」 私には、地図を持っていたモンスターに、そんなことができるとは思えなかった。

召喚魔法を使うモンスターには、私はまだ会ったことがない。 魔法を使う者はもちろん居るけど、召喚魔法を使うモンスターは知らない。

しかも、罠として仕掛ける魔法なのだから、普通の召喚魔法よりも高等なのではないかという気がする。そんな高等魔法を、地図を持っていたモンスターが使えるとは思えない。

「かなり昔、地図が古びてボロボロになるくらい昔には、高等な魔法を使えるモンスターが居たとか? そして、地図だけが、モンスターに代々受け継がれて今にいたるとか」 鍛冶屋さんがそう言ったが、それにはなんだか説得力がない。 地図を持っていたモンスターと箱を埋めた者は別だと考えるしかないだろう。

誰かがここに箱を埋めて、埋めた場所を地図にして残した。 そして、掘るとガーディアンがあらわれるような仕掛けをした。

どこかで地図を拾ったモンスターが、それが何なのかわからないまま持っていた。 そのモンスターを倒して、そいつがどこかで拾って持っていた地図を手に入れた。 そういうことなのかな。

「使うとモンスターを呼び出すことのできるアイテムというのもありますね」 と読み手さん。

「それをうまく使えば、掘ったらモンスターが出てくるような仕掛けを作ることができるかもしれない」 鍵開けを終えて立ち上がりながら言う。 箱の中には、お金と宝石、武器や防具、それからいくつかの道具類が入っていた。

「これ、勝手にもらっちゃって良いのかな。持ち主が居るはずでしょ」 私がそう言うと、鍛冶屋さんは笑った。

「いいんじゃない? 古い地図だからね。持ち主はもう居ないよきっと」 言いながら、箱の中身を3人に分配する。

ここに箱を埋めて地図を作り、ガーディアンが出てくる仕掛けを作る。 誰がそんなことをしたのだろう。 箱の中身は、金銀財宝というほどの宝物でもない。

場所を探し当ててガーディアンを倒し、仕掛けられた罠を解除して中身を得る。 一種の娯楽のようなものなんだろうか。

宝探しごっこ。ずいぶん高度な技術を使った遊び。 忘れ去られたその娯楽の名残が、モンスターが拾って持っていた古びた地図。

そんな遊びをしそうな人々となると、私にはたった1つしか思いあたらない。 古代モラ族、そして古代モラ族と共に居たエルアン人。 これもまた、彼らの遺物の一つなんだろうか。 それとも、こんなことのできる人々が、私の知らないダイアロスの歴史の中には居るのだろうか。

陽はまだ高い。牛たちがのんびりと草を食べている。 読み手さんがリュートを取り出して、静かな曲を弾き始めた。

たわいもないお喋りを続ける私たち三人の周りで、エルビン渓谷の時間はゆっくりと流れていた。