[ウィッチブレードのひとりごと]
エルガディンの調査から帰ってきて、久しぶりにシェル・レランに行くことにした。 鹿の肉は嫌いじゃないけど、いつも同じものばかりだとあきる。 街にいるときくらいは、他のものが食べたいし。
ビスクアルターから倉庫街に向かう。 まだ朝が早いのであたりは薄暗い。 朝早くなので道にはほとんど人がいない。 昼間は楽器を演奏している人たちでにぎわっているだけに、私はなんとなく寂しさを感じながら道を急いだ。
倉庫街をぬけるといっぺんに視界が開ける。 ここまでくればシェル・レランはすぐそこだ。 何を食べようかな? そんなことを考えながら、灯台のわきを抜けようとしたとき、灯台の上に人影が動くのが見えた。 ガードの人かな? なんとなく人影を見ながら、灯台のわきを通り過ぎる。 と、その人影がガードの人じゃないことに気がついた。 私は思わず近くの物陰に身を隠した。 あの人だ。 この前、会長と話していた女の人。 物陰から顔を出し、もう一度人影を確認する。 薄暗い中、黒い服を着ているので体の輪郭ははっきり見えない。 でもその分、白い顔が背景から浮き上がって見える。 あの女の人に間違いなかった。
彼女は灯台を見上げたり、周りを歩き回っている。 こんな時間になにをしているんだろう? 誰かと待ち合わせをしてるのだろうか。 港の朝は早いとはいっても、まだほとんど人がいない時間だ。 人に見られてはまずいことをしているに違いなかった。 しばらく様子を見ていると、彼女はテレポートの魔法でどこかに飛んでいってしまった。 私は見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。 なんとなくそんな気がした。