【カザヒシのメモ帳】
先日酒場で再会した親友と話をした時、彼女は少し面白いことを言った。
「アタシが言うのもなんだけどさ、ビスクの人らってのはおっかねぇよなぁ」
「おっかない? そんなに荒れてる街じゃないと思うけど?」
「そーじゃなくてさ、見ず知らずの場所へ殴りこんで、昔いた人らぶっ殺して追い出したんだろ? . 平和だの神の愛だの言ってるけどさぁ、とんでもねぇ奴らだと思わねえ?」
ビスクの酒場でする話ではなかったが、幸い店員の耳には入らなかったようだ。 言われてみれば、確かにビスク人がやったことはとんでもないと言われても仕方ない気がする。
神の愛を教えるためなどと言いながら、実際はここで暮らしていたエルガディンの人らを虐殺し、 そのまま首都を奪い、我が物顔で住み着いている。 挙句エルガディン人に対しては、田舎者だの異教徒だの神の愛を知らない野蛮人だの言いたい放題だ。
宗教、神を信じる力というものは、時に恐ろしい。 宗教は人を操る道具にもなり、人を救うこともできると、先生も言っていた。 盲目的で、狂信的に、傍から見ればとんでもないことをしてしまうものだ。 そういう話をしたときに、少し気になった。
この島には、いろいろな宗教と信じる神がいる。 次はこのダイアロスの宗教について調べてみよう。 まずはこのビスクから始めてみよう。
幸か不幸か、私は信じる神を持っていない。中立という意味では、都合がいいだろう。 子供の頃、神様を信じるかと聞いたら、私の親友はにっこり笑ってこう言った。
「神様ってのが腹減ってるときに食い物くれたり、困ったことは何でも解決してくれるとしてもだぜ? . どこにいるのか、どんな奴かも知らない奴を頼ろうとは思わねぇなぁ。 . そんな奴頼るくらいなら、アタシは目の前にいる頼れる親友をアテにさせてもらうよ」
見知らぬ誰かに祈るくらいなら、長所も短所も知ってる親友の方がアテになる。 私にもそう思えた。