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エルアン文明研究会

毎週火曜日・土曜日 23:00~ Pearlサーバー レクスール城門南の小部屋 で開催中
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もう1つのアルター

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

北にある滝から落ちた水はそのまま南に向かう川になり、大きな湖へと流れ込んでいる。 岸辺に立って見上げると、湖の中央には立派な城が見えた。イルミナ城だ。この中でイルミナが日々祈りを捧げているらしい。

私が居るイプス湖の岸辺には、太くて大きな鎖が地面に固定されている。重そうな鎖は真っすぐに城へと向かい、城の上に浮かぶ結晶へと続いていた。 青く不思議な光を発する巨大な結晶。全ての魔法力の源。古代モラ族が残した最大の奇跡。城の上に浮かんでいるあの石が、ノア・ストーンだ。4本の鎖でつなぎとめられて、イルミナ城の真上に固定されている。

このイプス渓谷にも、私はあまり来たことがなかった。 山に囲まれた広大な渓谷。その広い面積のほとんどは何もない草原だ。視界をさえぎる物が無いので、渓谷のどこに居ても遠くにイルミナ城の姿を見ることができる。

あの中で、イルミナはいったい、誰に何を祈っているのだろう。 「侵略者と呼ぶ者も居るが、それは大きな間違い。平和をもたらすのが私たちの使命」 イルミナ城への通路に立つビスクガードはそう言っていた。きれいごとを言っているのではなく、この人は本気でそう思っているようだ。 ドラキア帝国と併合されることで、未開の恵まれない土地に住む人々に今より豊かな生活を保障するのだと本気で言っている。帝国の豊かさを手にするチャンスなのだと力説するこの人は、しあわせに暮らしていたエルガディン人たちを殺して土地を奪ったことを、いったいどう思っているのだろう。

エルガディンとの戦いで力強く戦ったとこの人が称える3人の英雄・トライデントは、エルガディンから見れば憎い敵でしかない。エルガディンの五大英雄にしても同じこと。サスールの人から見れば彼らはただの厄介な敵で、英雄でもなんでもない。

平和を望んで戦ったと称えられる英雄と呼ばれる人たち。当然のことだけれど、彼らはその陣営にとっての英雄でしかない。全ての人が英雄と呼ぶことのできる者を、私はまだこのダイアロスで見たことがないし、そう呼べる人の話しを聞いたこともない。

多くの者が同じことを言う。私たちが望んでいるものは平和だと、多くの人が言う。 ドラキア帝国から来たビスク軍、ネオクの町に隠れ住むエルガディン、エルビン山脈に居るサスール国の人々、ヌブールでひっそりと暮らすモラ族、私たちは平和を望んでいると皆が言う。

いっそあんな石など無ければ良いのにと私は思う。あれがなければ、奪い合って争うこともない。 ノア・ストーンを封じるべきだというサスールの考えは、おそらく正しいのだろう。全ての魔法力の源であるあの石は、全ての争いの源でもあるように思える。 あのノア・ストーンを消し去る者がもし現れたなら、その人のことを英雄と呼んであげても良いなと私は思った。

「こんな所にアルターがあるなんて知らなかったわ」 城を見上げながら私が言うと、鍛冶屋さんは無理もないというようにうなづいた。 賢者さんと行ったアルビーズとヌブールのことを話していると、「もう1つあるよ」と鍛冶屋さんが言ったのだ。「アルターは8つじゃなくて9つ残ってる」と。 見たことがないと言うと、案内してあげようということになって、こうして今私は鍛冶屋さんと2人でここに居る。

「誰が見つけたのかは知らないけど、あんな所にあるアルターをよく見つけたよね」 鍛冶屋さんはそう言いながら、ツルハシの柄で地面をトントン叩いた。9つ目のアルターは、私たちが立っている場所の真下にあるらしいのだ。

「まあ、行こうか」 言いながら湖に飛び込んだ鍛冶屋さんを追って、私も岸から水に入った。

 

湖底に口を開けた亀裂の中を、どんどん潜っていく。私がかけた水中呼吸魔法の効果で、鍛冶屋さんと私の身体は淡い水色の光を放っている。その光に照らされて浮かび上がる深い水の底の景色は、とても幻想的だった。

どこまで潜るんだろうと不安になり始めたころ、下へと続いていた通路は行き止まりになり、そこから90度曲がっていた。 水の中なので上下左右の感覚がなくなっているけど、下に下にと続いた亀裂は東に向かって曲がっているようだ。身体の向きを変えると目の前に光が見えた。

「なんなのここは。どうしてこんな場所が・・・」 私はただ茫然とつぶやく。 振り返ると、今出てきた湖から続く通路に水の壁がある。湖の水が壁になって、私たちが通ってきた通路の出口で波打っているのだ。少し傾斜のついた水の壁は、流れ落ちてくるように見えて、しかし全くこちらに押し寄せては来ない。

「どういう力が働いてるのかは私にもわからない。普通ではありえないよね、こんなふうに水が壁になるなんて」と鍛冶屋さん。

そこは、地の底にできた丸い空洞だった。 崩れた土に半ば埋もれるようにして、傾いたアルターがそこにはあった。 アルターの前に、モラ族が居る。 こんなところにたった一人で、さびしくはないのかしら。 話しかけると、このアルターについて教えてくれた。

「我らモラ族は時の番人。このアルターは時を超える特別なアルターだ」 確か、箱舟遺跡に居たモラ族も同じことを言っていた。我らは時の番人だと。

時の番人。 それはいったい、どういう意味なんだろう。 時の流れを監視する者。見守る者。警戒する者。管理する者。修正する者。 時の流れを司る者。時を操る者。時を支配する者。

時を支配する能力。それはとても恐ろしい力だと私には思えた。 古代の力を失ってしまった今のモラ族は、本当に弱々しい存在なのだろうか。 モラ族とは、今もなお強大な力を持っている種族なのではないだろうか。水の底にある不思議なアルターの前で、そのとき私はそう思った。