[セレナイアの手記]
夜のとばりが下りたあと、街明かりのオレンジの光ほど頼もしいものはない。 パチパチと音を立てる松明に、ごうごうと炎と熱気を振りまくかがり火。 ただ一つ、静かに、冷たく灯るのは街灯の明かり。 燃え盛る炎に比べるとその光は小さなものだけど 鉄の柱に支えられて、ガラスの窓に囲まれたそれは 雨の日も、風の日も、ただ黙々と私たちに道を示してくれる。
ビスクの塔について、一通り調べた私は 次のテーマもまた、ビスク特有のこの街灯にすることにした。
考え事は港でするのが定番なのだけど 最近はガードの兵士さんたちから妙に視線を感じる。 …確かに、泳ぐわけでもシェル・レランで食事をするわけでもないのに 夜な夜なうろうろしてたら不審者だよね。
港を追われた(?)私が今日訪れているのは、ビスク中央エリアにある ビクトリアス広場というところ。 お店もなければ、普段あまり人の姿を見かけない寂しい場所なのだけど ここに来た理由は一目瞭然。
街灯がいっぱい! 広場の中央にあるイルミナ様の像の噴水を中心に、内側16本、外側も16本 合わせて32本もの街灯がとりかこんでいる。
ビスクで一番賑やかな、露店が立ち並ぶ西エリアにだってこんなに街灯が密集している場所はない。 どうして、こんな人気のない場所をここまで照らす必要があるのかな?
ここにあるのは、イルミナ様の像を中心に12日間戦争で犠牲になった3人の英雄の像だけなのに。 もちろん、尊い人たちなのはわかるのだけど…
英雄の一人、ホルテ様の像を感慨深そうに見上げる人がいる。 あの人に、話を聞いてみようかな。