[セレナイアの手記]
私はセレナイア。
ダイアロス島の、ビスクに暮らす魔法使い。
この手記には、やっぱりあの日のことを最初に書こう。
私はその日、友達に会うためにビスク東エリアに向かっていた。
賑やかな街の中心から離れると、周囲の風景もがらりと変わる。
隙間なく積み上げられた石壁と石畳から
自然の岩と草の生えた地面に変われば目的地はすぐそこだ。
ツタに覆われた古めかしい酒場を横目に、待ち合わせ場所の小さな銀行を目指す。
友達との用事を済ませた私は、小腹を満たすために近くの露店でバナナクレープを買う。
とろりとしたバナナとクリームのハーモニーを上機嫌で楽しみながら、なんとなく、銀行近くの掲示板を見ていた。
いつものようにモンスターの討伐依頼や、物々交換の募集などが書かれた紙片で無秩序に埋め尽くされている。
けれどその日は、その中の一つは、ちょっと異質だった。
”ダイアロスの歴史を知る会 参加者募集”
気が付けば私は、紙片に書かれた場所に向かって歩き始めていた。
きっと何か、わくわくするようなことが起こりそう、そんな予感がしたから。