[ウィッチブレードのひとりごと]
その日私は、知り合いの鍛冶屋さんに頼まれて、ビスク地下水路に出かけることになった。 楽器作りの材料である硫酸塩と亜鉛を集めてほしいという依頼だった。 出かける前に仲間内から情報を集めてみると、目当てのものはロックゴーレムやアイアンゴーレムが落とすらしい。 それを聞いて、私は少しほっとした。
皆さんもご存知のように、ビスク地下水路は迷路のように入り組んでいる。 しかも風景に特徴がなく似たような場所ばかりなので、とても道に迷いやすい。 私は何度かガイア討伐ツアーに参加したことがあるので、ガイアの生息域に向かう道はある程度知っている。 でも、それ以外の道はほとんど知らない。 知らない場所に入り込んだら、余裕で迷子になる自信があった。
幸いなことに、ロックゴーレムやアイアンゴーレムは、ガイアに向かう途中で何度も見かけたことがある。 しかもあまり強くはないモンスターだ。 大勢に囲まれたりしない限り、苦戦することはないだろう。 依頼品の数を集めるのに少し時間がかかるかもしれないけど、あまり危険はない仕事に思えたのだ。
久しぶりにエルビンに行って焼肉でも食べようか。 私は礼金の使い道を考えながら地下水路の階段を下りていった。 道の途中にいるゴーレムは、気配を消してやり過ごして先に進む。 できるだけ余計な戦いはしたくなかった。 そもそも私があまり地下水路に来ないのは、ゴーレムが好きになれないからだ。 ゴーレムに矢を当てても、カキンカキンと跳ね返されて、攻撃が効いているのかどうかが良くわからない。 しばらく矢を当てていると倒れるから、攻撃が効いているのは間違いないけれど、その実感がほとんどないのだ。 だからゴーレムと戦ってると不安になってしまう。
やっぱり矢が刺さらないと安心できないよねー。 そんなことを考えながらしばらく進むと、私は大きな水路に出た。 水路をはさんで向こう岸が遠くに見える。 水路には周囲の小さな水路から水が流れ込んでくる。 ビスク中の水がここに集まっているんじゃないかと思うような光景だ。 たしかロックゴーレムとアイアンゴーレムは、このあたりで見かけたはず。 あたりを見回すと、探すまもなく遠くにゴーレムの影が見えた。
私は一体のゴーレムにできるだけ遠くから矢を射かける。 矢はゴーレムにあたり、跳ね返った。 するとそのゴーレムはこちらを振り返り、ゆっくりと近づいてくる。 他のゴーレムは反応しない。 うまく一体だけ引き剥がせたようだ。
こうやって一体ずつ倒していけば、大きな危険はないだろう。