[ガブたまねぎの目に沁みたい話]
「ホムンクルス」は身近な存在と思っていた。わたしにも一人、友達のホムンクルスがいる。 身近な存在だと思っていたからこそ、自分という存在との境界が曖昧になっていって、 今のような調査をすることに至った訳であるけれども…
でも本当は、わたしは彼らについて何も知らなかったのだ。 ホムンクルスというものがどういう存在なのか、まずはそこから調べてみることにした。 もし私たちとホムンクルスとの間に、両者を隔てる何かがあるとすれば、 それは私の姿が、島の外から変わっていないという証拠になるかもしれない。
……でも調べてみる、って言っても、どうやって調べたらいいんだろうなぁ たまきち(友達のホムンクルスの名前)に聞いても全然答えてくれないし… 大体ホムンクルスは皆無口だから困る。
とりあえず箱舟遺跡にでも行ってみようかな…。ホムンクルスは古代の技術って話だし。 そう考えて銀行で出発のための荷物を整理していたとき、ふと掲示板のあるチラシが目に入ったんだ。
『エルアン文明研究会』
タイトルだけ読んで、はじめはすぐまた荷物整理に戻った。でも、その響きに興味がふつふつと湧いてきて… 気がついたら、掲示板の前から動けなくなっていた。
エルアン文明ってのは聞いたことがある。むか~し、この島で繁栄した文明らしい。 高度な技術力を有し、その遺跡があちこちに残っている。
「きっとホムンクルスも、エルアン文明の技術に違いない」
研究会の開催日時を見たら、時間まであともう少しだった。 きっと面白い話が聞ける。 わたしはそう思って、研究会に参加してみることにした。
期待は裏切られることなく、研究会での時間はとても有意義なものになった。 聞くところによれば、ホムンクルスはエルアン文明の技術であるばかりでなく、 そもそもエルアン文明が、ホムンクルスの作った文明であるらしい! 無口な彼らからは語られない、そんな歴史があったんだ。
研究会はあっと言う間に終わってしまったが、次に調べるべき場所の見当はついた。 なぜ滅亡したエルアン文明の欠片であるホムンクルス達が、現在にも存在しているのか? その鍵は過去ではなく、未来にあるらしい。 モラ族のイーゴが、失われた古代技術を蘇らせる研究を未来で行っているようなのだ。
次の研究会までは、自由研究の時間だ。 もしかしたら凄い発見をして、みんなを驚かせられるかもしれない。 そしてホムンクルスを、ひいては本当の自分を知ることが出来るかもしれない。
そんな期待を持ちながら、私はアルターの上に乗って、未来のことを思い浮かべた。 体が光に包まれた次の瞬間、わたしは時間を矢のように駆け抜けた。
つづく