[元銃弾販売員Ctanaの日記]
モラたちが乗ってきた箱舟、そして、モラたちが造った古代遺跡。エルビン渓谷にあるこの2つの遺跡を見た後、スルト鉱山にある火竜神殿を見てきたわけだけど、火竜神殿の転送装置からエルビン渓谷南部の古代遺跡に転送されるのはなぜなのか、私はその理由が見つけられずにいる。
なぜなんだろう。
鍛冶屋さんの言うように、この転送装置を作ったのは古代モラ族なのだろうか。それとも、エルアン人たちがモラの神殿と自分たちの神殿をつないでいたのだろうか。 それを確認することは、今の私にはできない。そもそも、あの古代遺跡が本当にモラ族の神殿だったのかどうかもわからない。
ただ、私にもわかることが1つだけある。転送装置というのは、装置から他のどこかへ転送させるための物。決まった座標に移動するための装置だということだ。
古代モラ族の作ったアルターという装置は双方向移動のように見えているけど、送信受信という関係ではおそらくない。送信機のある座標に転送先が指定されているだけだ。だから飛んだ先にはアルターがある。 受信装置は不用なのだ。受信機がなくても転送はできる。
逆に言うと、転送先にあったはずの装置が壊れてなくなってしまうと、転送された先には何もないという状況になる。古代遺跡の状況が、それなのではないのかな。 火竜神殿から転送されたあの場所には、別の転送装置があったのではないだろうか。昔は、それに乗れば火竜神殿に戻ることができた。つまり、古代遺跡と火竜神殿は自由に行き来できていた。
元々あった火竜神殿に戻るための装置は壊れてなくなってしまい、そこには石の床だけが残った。だから、転送された先が何もない石床の上になっているのではないだろうか。
古代モラの遺跡と火竜神殿が自由に行き来できていたということは、モラ族とエルアン人にはなにか関係があったということだ。 どこで聞いたか忘れてしまったのだけど、エルアン人はホムンクルスだと聞いたことがある。本当にそうだとしたら、関係があるどころの話ではない。エルアン人は、モラ族によって創られたのだということになる。
あちこちで聞いた話を統合すると、私の理解している出来事の流れというのはだいたいこんな感じになる。
モラ族が箱舟でやってきた。 モラ族はホムンクルスを創って労働力にした。 謎の災厄でモラ族は衰退した。 ホムンクルスたちが自分たちの文明を作った。 それがエルアン文明と呼ばれ、ホムンクルスたちはエルアン人と呼ばれるようになった。
そしてエルアン人たちも今はもう居ない。 古代モラ族の創ったホムンクルスの末裔は、もう滅んで居なくなってしまった。
私たち旅人は、身体はホムンクルスだけれど魂は違う。モラの創った身体に魂を結び付けてあるだけだ。私たちはホムンクルスではない。外の世界からやってきた魂だけの存在。借りものの身体で、このダイアロスで暮らしている。
この間、火竜神殿に行ったときに思ったことなのだけれど、エルアンナイトと呼ばれている剣を持った骨の化け物はいったい何者なのだろう。 ただの魔物なのだろうか。それとも神殿に侵入する者を排除する目的で作られた戦闘機械なのだろうか。
エルアン人たちが、神殿を守る目的で配置したトラップ。私にはそう感じられた。 ダイアロスには、手ごわいモンスターが数々存在している。 それらから身を守るための護衛。あるいはそれらを撃破するための戦闘員。そういった者もこのダイアロスでは必要だ。 それが、エルアン人たちにとってのエルアンナイトではないのかなと私には思える。
モラ族はどうだったのだろう。 エルアン人にとってのエルアンナイトのような者は、モラ族には居なかったのかな。
エルビン渓谷にいる火の牛や、イルヴァーナ渓谷の巨大竜。スルトの地底深くに居る巨大な毒トカゲや、タルタロッサパレスに居る魔力の高い鳥人。そんな怪物を相手にモラ族やホムンクルスだけで戦えたとは思えない。
借りものの身体で戦う私たちは、身体が生命力を失って動かなくなってしまっても魂は滅びない。蘇生してもらえばまた戦うことができる。私たちは、外からやってきた魂とモラの創った身体でできた、いわば不死のモンスターなのだ。
私たちのような者が居なかった当時のモラ族には、ホムンクルスの他に戦闘員が必要だったのではないだろうか。 労働力としてのホムンクルス。戦闘員としての他の何か。
唐突に、頭の中に、空飛ぶメダマの姿が浮かんだ。 バエル・・・。あれはダイアロスに元々居る動物ではないのかもしれない。 あまりにも他とはかけ離れた姿。彼らが空を飛ぶ原理もわからない。 ダイアロスに居る他の動物たちと比べると、あきらかに異質だ。
あれが、作られた生き物なのだとしたら。作ったのがモラ族だとしたら。バエルの不思議を説明できるかもしれない。