[カザヒシのメモ帳]
レクスール・ヒルズをひたすら走り回った。 そして、かつての文明の名残のある場所、その端にあたる部分に片っ端から印をつけた。 エルアン文明の残骸分布地図と言ったところだ。
こうして見ると、かつてこの地にあったというエルアンの文明も見えてくる気がする。 残骸のある範囲から推定するに、エルアン文明がこの地のどこに建物を残していたかがある程度わかる。 尼橋と呼ばれる巨大な橋は、みたところ東エリアの城門と似ている。 攻め込んだ後にビスクが改修したものか、エルガディンがかつて作った橋なのかは不明だが、 地図を見ると他の残骸から明らかに孤立しているし、少なくとも古代文明のものではなさそうだ。
だとすると、跡地の残骸は南端、東端、西端にあたる場所を確認できる。 でも北端にあたるその場所はギガースの近くになるけど、あの先は崖になっている。 もし、あの先にも瓦礫が……空中神殿が続いていたとしたら? レクスール・ヒルズの北にあたる場所……そこは間違いなく、ガルム回廊だ。 二枚の地図を重ねてみる。
……やはり、洞窟の続く先に、空中神殿が重なる可能性は十分にあると言えるのではないか? レクスールから北に延びた空中神殿は、この地を超え、ガルム回廊にまで至り、 そしてあの洞窟の真上まで伸びていても不思議ではない。
ガルム回廊には残骸らしきものが見当たらないのが気になるところだが、あの辺りは川も多い。 流されたり水底に埋まってしまっただけの可能性もある。 もし空中神殿が段々高くなるよう作られていたのなら、 南側のレクスールに流れ込むように崩れた場合、ガルム回廊に残骸が落ちないことも考えられる。 そもそも、空中神殿がどのように消えたかすらわかっていないのだから、崩れ方など想像もつかない。
ガルムへ戻る途中、橋のまっすぐ南にあたる場所でふとあの橋を見上げて気付いた。 崖崩れ、というには少し奇妙な崩れ方をしている様に見える。 いや、さすがにこれはただの自然現象……なんだろうか? 崩れてるのは間違いないけど……
エルアン宮殿の中には、空間を移動することができるものが多数見られる。 それは転送石と呼ばれる石であったり、小型の魔法陣であったり、大型の魔法陣もある。 そんな便利なものを使えるのなら、空中に浮かぶ神殿と地上を繋ぐ何かがあっても不思議はない。 現にヴァルグリンドの巣穴に大型の魔法陣が存在し、現在エルアン宮殿へ行く方法はそれだけだ。
もしかしたら…… あのガルム回廊の橋の先にある小さな洞窟から、天空の神殿へと行くことができたのだろうか?