[カザヒシのメモ帳]
War Ageから逃げてきたところで、一旦整理してみる。
十年後、あの場所に橋をかける意味は間違いなくある。 ELG軍が敵の本拠地へ攻め込むための道を増やすためのものだろう。 ビスクへ攻め込むため、イルヴァーナ渓谷を抜けてレクスールを進むだけでなく、別の道を作った。
とはいえ、私が気になっているのは現代のことだ。十年前にあたる今、すでに橋は架けられた後だ。 現代のエルガディンだって、もちろんビスクを憎んでいるし、かつての首都奪還を狙っている。 しかし、現状はというと、キング・オラージュの方針から、国力の回復を優先している。 すぐにビスクへ攻め込もうという急進派もいるが、反乱軍として敵対し、内乱状態だ。 そんなエルガディンが今よりもさらに昔に、あんなところに橋を架けるだろうか？ そもそも、あそこに橋を架けて意味があるのは、イルヴァーナとのトンネルが開通してこそだ。
もちろん先に橋を架けて、その橋を使ってガルム側からもトンネルを掘った可能性はある。 今のガルムの様子は、橋を架けてトンネルを掘り進めたものの、 途中で橋が崩れてしまい、作業を中断している状態とも考えられる。 急進派のゼウール率いる反乱軍が、正規軍の知らないところで行っただけかもしれない。
だけどそれは……やっぱり不自然だと思う。 彼らは私たち旅人とは違い、アルターからアルターへ簡単に移動できるわけではない。 トンネルがない今、エルガディンの本拠地であるネオクからガルム回廊に橋を架けるということは、 イルヴァーナからレクスールを超え、ビスクの城門を目の前にしつつ北のガルムへ入り、 さらにそこから引き返す形で東へ向かった先で、やっと橋を架ける作業になる。 はたして橋の資材を運びながらレクスールからガルム回廊へ通過するようなことができるだろうか？ 敵の本拠地を前にのうのうと資材を運ぶELG軍も、 気付かないはずのないその動きを無視するBSQ軍も、どちらの動きも不自然だ。
飛竜を使って空路で物資と人員を輸送したとしても、やはりガルム回廊の西側まで行くしかない。 ビスクから見れば、敵の飛竜がこちらに向かって飛んで来るのだ。 そんな光景を目にして、それを無視するとはとても思えない。
第一、あんな場所に橋を架ける余裕があるのなら、 正規軍は反乱軍を退け、イルヴァーナに砦を完成させるのが先だろう。 反乱軍にしても、砦の一つすら持っていない。簡素な砦でも作るのが先じゃないだろうか？
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後に砦が完成するイルヴァーナの祭壇[/caption]
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砦も持たない反乱軍の指揮官たち[/caption]
エルガディンが架けたにしては、今現在だとやはり不自然な橋ではないだろうか。 だからと言ってビスクがネオクへ攻め込もうなどという意思は見られない。 そもそもビスクがエルガディンを根絶やしにする、というほどの理由は持っていないだろうし、 首都を奪って八年とはいえ、ビスクの各所は工事中の看板も目につく。 攻め込んで来ることがわかっている以上、守りを固めることを優先するのが当然だ。
だとするとやはり……なんだか今一つ納得がいかない。 今この時点で架けられている橋は、未来の戦争のために架けられた橋ではないのだろうか？ もっと別の何かがあるのかもしれない。
もう一度ガルム回廊へ行こう。
