[セレナイアの手記]
穏やかな波の音を聞きながら、潮風に優しく髪を撫でてもらう。 風が運んでくるのは海の匂い…だけではなく、食欲を掻き立てるいい香り。 歴史の研究会と運命的（？）な出会いを果たした東エリアからもほど近い ここビスク港は、私の一番のお気に入りエリアだ。
この島の歴史に思いを馳せながら、のんびり海を眺める。 うん、なんだかとても優雅な午後を過ごしている私。
影響されやすい私は、その優雅な気持ちを長続きさせることができなかった。 そういえば、ここの塔は何だろう？
小さな港だけど、ビスク屈指の高さを誇る２つの大きな塔がそびえたっている。 港に立つ塔といえば、誰もが灯台を思い浮かべるところだけど この塔はどちらも光を放ったりはしていない。
早くも一人前の研究者気分になった私は この謎を追求すべく、ベンチから飛び上がって走り出した。
まず建物に上って、塔の外観を眺めてみる。 塔には小さな窓しかない。 太い木の棒が８本突き出ていて 人一人乗れるくらいの四角錐の金属の塊が鎖でぶら下がっている。
次に塔の中だけど、金属でできた大きな球体の中で何かが燃えている。
球体は天井から吊り下げられていて、天井に向かって太いパイプのようなものが伸びている。
不思議なのは、モノを燃やせば煙が出るはずだけど 煙突のようなものは見当たらないし、どこかの穴から煙が出てくる様子もない。
塔の上の階を調べてみたいけど、はしごが上げられていて一般人は立ち入り禁止みたい。 ２つの塔どちらも行ってみたけれど、見える範囲ではまったく同じだった。
近くにいた兵士さんも何も教えてくれないし...
歴史に関係があるのかわからないけど 私の初めての研究テーマはこの塔にしようと思う。
謎は２つ。 １つめ。壁から突き出した木の棒。 ２つめ。中にある炉のようなもの。
...ここまで記録したところで、今日の調査を中断する。 塔のすぐ横にある料理ギルド「シェル・レラン」が目に入った以上 いえ、より強くなった料理の匂いも相まって 私はこれ以上、我慢ができない。
