[ウィッチブレードのひとりごと]
テオ・サート広場の屋台で何か食べ物を買ってこよう。 私は部屋を出ると狭い路地をぬけ、木工広場に出た。 魔法研究所の横を通りかかったとき、黒い人影がビクトリアス広場に向かうのが見えた。 何気なくそちらに目をやると、胸がドキンとした。 私は思わず塀に姿を隠し、その人の後姿を確認する。 間違いなくあの人だ! 胸の鼓動が速くなる。 このチャンスを逃しちゃいけない。 私は細心の注意を払いながら彼女のあとをつけていった。
広場の入り口に立った彼女は、周りを見回すと広場の中に入っていった。 私は草むらの陰に隠れながら彼女のあとをつけていく。 彼女はたまに立ち止まっては、上を見上げる。 その様子は港で彼女を見たときに何となく似ている気がする。 思わず私も上を見上げてみる。 別に雨が降っているわけじゃない。 銅像を見ているのかな?
よく見ると、彼女は何かをぶつぶつつぶやいている。 港で見たときは夜だったのでよく見えなかったけど、あの時もこんな風に独り言を言っていたのだろうか。 上を見上げつつ何か独り言を言っている彼女を見ていると、彼女が何か危ない人のように思えてきた。 やがて彼女は東地区の入り口に向かって歩き始めた。 私の目には子供たちが集まって遊んでいるのが見えてくる。 彼女は子供たちの近くで立ち止まると、また上を見上げる。 そして独り言を言い始めた。 子供たちに話しかけているのかな? 子供たちは興味深そうに彼女を眺めている。
その様子を見ていた私は何か引っかかるものを感じた。 この光景はどこかで聞いたことがあるような気がする。 どこだっけ? ・・・そうか。 家の近所のおばさんたちが話していたことにそっくりだ。 なんだっけ? じあん? そうだ!事案っていうんだ! ぶつぶつと独り言を言いながら子供たちに近づく不審な人物が最近目撃されている。 注意するようにと、街の掲示板にも張り紙がしてあった。 これはきっとそれに違いない。