[カザヒシのメモ帳]
隠れ里ネヤ。モラ族がひっそりと暮らす、穏やかな場所。 アルターを使って来れば、あっという間に辿り着くことができた。 しかし、未だにここがダイアロスのどこにあるのか、私は知らない。 この場所から長老イーノス様の許しを得た場合、広大なスローリム平原に出る。 だがそこから先は、道らしい道がなく、どの場所の近くなのかもわからない。 歩いていく道もわからないとは、まさしく隠れ里ということだろう。
私がこのダイアロスに流れ着いた時、最初に会ったのはモラ族だ。 そして伝説とも言われていたこのダイアロスの事、この島での暮らし方を教えてくれた。 何から何まで教えてもらった場所、それがこの隠れ里ネヤだ。 私以外の旅人にも、ひとまずここで島についてのことを教えているらしい。
モラ族が多めだが、この隠れ里ネヤはモラ族以外もたくさんいる。 採取、生産、戦闘、魔法、ペットの扱いや泳ぎ方まで、 あらゆる分野を網羅するためには、それに相応しい人材が用意されているという事だろうか。
その中で、モラ族だけに絞って話を聞いてみることにする。 旅人に何から何まで教えてくれる親切な人達が揃っているおかげで、 好意は嬉しいのだが、全員と話していては何日かかってしまうかわからない。
幸いにも、ノア・ストーンとモラ族について教えてくれる人がいた。
「大陸の人間が取り合っている ノア・ストーン は モラ族が築きあげた文明の遺産なのだ。
ノア・ストーン は全ての 魔法力の源。 遥か昔には 科学 とか呼ばれていたらしい。
私たちモラ族が ノア・ストーン を作り出すまでは この島に 魔法 は存在していなかったのだ。
モラ族の手を離れてしまった ノア・ストーン は 様々な人間たちに狙われ、利用されている。
あの力の全てを使いこなせるのは 古代モラ族 だけ。
人間たちは、欲深い生き物。 使いこなせなくても、あの力が欲しいのだろう」
街での生活や、先生の授業で聞いたことのある話の中だった。 ノア・ストーン。魔法を生み出し、さまざまな力を得ることができる。 その全ての力を使いこなしていたという、古代モラ族。 つまり今現在のモラ族は、その力を利用できていないということだ。
かつて自分たちの祖先が使いこなしていたノア・ストーンの力。 他種族に奪われ、今はその手を離れしまったモラ族は、何を思うのだろうか?