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エルアン文明研究会

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共に進む時間

[元銃弾販売員Ctanaの日記]

「落ちてきた? のですか?」 驚いて大きな声を上げてしまった。

すっかり陽が暮れてしまったミトヤの大樹には、私と賢者さん以外の人影は無い。 遠くから響いてくる滝の水音だけが、ざわざわとかすかに聞こえている。

私は、現代のエルビン渓谷にある箱舟遺跡が、この1万3000年前からずっとあの場所にあったのだと思っていた。古代モラ族は箱舟でやってきてあの場所に降り立った、そして、それ以来ずっとあの場所に箱舟はあった。そう思っていた。 だけど、どうもそうではないらしい。箱舟は、今から少し前に、あの場所に墜落したのだそうだ。

「そのことについて書いてある書物が、ラスレオ大聖堂の図書室にあったのですか?」

「書物があったわけではないわ。あそこにあるのは、ビスクがエルガディンから奪った古文書がほとんど。古代のことについて書いてある物はいろいろあるけど、近代について書いてあるものはあまりない。箱舟の話は、図書室で会ったその頃のことを知っている人から聞いたの」 記録として残っているものは、どうやら無いらしい。 知っている人から聞くしか、知る方法がないことのようだ。

「それにしても・・・。落ちてきたなんて・・・」 じゃあ、あの箱舟は、ずっとどこかを飛んでいたということなのだろうか。 少なくとも、古代モラ族が“謎の災厄”によって全ての技術を失ってから現代までの間ずっと。

箱舟がどこを飛んでいたのか、なぜ飛んでいたのかはわからない。“飛んでいた”のかどうかもはっきりわからないのだけど、最近まであの場所に箱舟遺跡が無かったのだとすると、1つ不思議なことがある。

現代の箱舟遺跡に居るモラ族、ウティルのことだ。 私のブランクノアピースに古代の記憶を吹き込んでくれた人である。 彼は、一人で箱舟遺跡の管理をしているらしいのだけど、ごく最近あの場所に突然現れた箱舟の管理が、彼にはなぜできるのだろう。 最近まで無かったのなら、今のモラ族にとってあの箱舟は見たこともない物のはずだ。 災厄によって全ての技術が失われてから少なくとも数千年の月日が流れている。初めて目にする箱舟の扱い方を、なぜあのウティルは知っているのだろう。

「それからね。驚かないで聞いてね」 と前置きしてから、賢者さんは話を続ける。

「あの箱舟があの場所に落ちてきたのは、今から10年前のことらしいの」 そう言って、賢者さんは私の顔をのぞきこんだ。 私の反応を確かめようとしているみたいだったけど、私はただ、なんのことかわからなくてキョトンとしている。

「そして、10年後の戦乱の世界“war age”には、その当時もう行くことができた」

「え?」

war ageのことは、もちろん私も知っている。 現代のヌブールの村で、長老イーノスから頼まれて戦争を終わらせるために旅立つ世界のことだ。 ビスクとエルガディンが戦争を始めてしまい、ダイアロスは戦乱の世になっている。 時代としては、今から10年後の世界。

「え? だって、じゃあ・・・」

「そういうことになるわ。10年前に箱舟が落ちて来たときから10年後の今は、ビスクとエルガディンが戦争を始めた時代。つまりwer ageよ」 そんな馬鹿な。だって、ビスクとエルガディンの戦争は、まだ始まっていない。 それに、“今”から10年後の世界がwar ageだ。10年前から10年経った世界ではない。

長老イーノスからもらった“時の記憶”を使ってヌブールの村にあるアルターから時間移動すると辿り着くwar ageは、“今”から10年後の世界。あくまでも、出発する時点から10年経った世界だ。 箱舟が墜落した時代のヌブール村アルターから移動して到着するwar ageは、今の私が居るこの現代ではない。 なんだか少し混乱してしまう。

あ。もしかしたら・・・。 war ageの開始時点が現代の時間の流れと共に動いているんじゃないのかな。 “今”から10年後というのがいつまで経っても変わらないのなら、“今”と“今から10年後”が一緒に動いているんじゃない?

川を流れる何本かの丸太の上を、ピョンピョン飛び越えているような感じ。 どれも一緒に流れているので、それぞれの間隔や位置関係は変わらない。 だけど、どの丸太の上にも時間は流れていて、周りの景色は変わっている。

ダイアロスという川の流れの中を、現代とそれぞれの時代が同じ間隔を保ちながら流れている。 私たち旅人は、丸太に飛び移るように時代を飛び越えることができる。

モラは、時間を超えることができないらしい。 少なくとも箱舟遺跡に居るウティルは、ancient ageに移動することができないと言っていた。 時の番人である彼らは、時の番をしなくてはならない。 彼らが移動できないのは、流れに乗ってしまっては、時を見張ることができなくなってしまうからなのだろうか。 あるいは、もしかして彼らは、流れの外に居るのだろうか。

 

ここミトヤの大樹にも、もちろん時間は流れている。 新しく家が建ち、壊れてなくなる家があり、去っていく人も居れば新しく来る人も居る。 現代から来ることができるancient ageはいつもただ1つだけ。“今”から1万3000年前の世界だけだ。 たぶん、このancient ageの時間も、現代の時間と共に流れている。 私たちが行くことのできる様々な時代は、同じ間隔を保ったまま時間の中を流れている。 それがいったいどういうことなのか、私にはまだよく理解できていないのだけど。

この世界に、現在から1万3000年前の世界に、箱舟はあるんだろうか。 この時代の箱舟という意味なのだけど、それはどこかにあるんだろうか。

箱舟には、古代の記憶が残っていた。 突然エルビン渓谷に墜落した箱舟。箱舟遺跡に宿っていた古代の記憶。 このancient ageから現代に、箱舟は移動したのではないのかな。私たちがアルターで時を超えるように、箱舟は時を超えて古代から現代に落ちてきたのではないのかな。 そこに何かの意味があるのだとしたら、それは、古代の記憶を現代に届けること。 古代の記憶を現代に届けるために、箱舟はエルビン渓谷に落ちてきた。

私は、空を見上げてみた。 もしかしたら、そこに飛んでいる箱舟が見えるかなと思ったのだけど、そこには何も飛んでいなかった。